LotRo ロード・オブ・ザ・リングス・オンライン アングマールの影 雑感

指輪物語The Lord of the Rings は、イギリスのJ・R・R・トールキンの手によって(主に)第2次世界大戦中に書かれたファンタジー作品。元々トールキンはイギリスの言語学者・大学教授で、オックスフォード英語辞典の編纂の仕事を行っていた。
若い頃は架空言語の創作を好み、それが『指輪物語』のエルフ語に繋がっている。
日本では1972年から出版され、英語由来の固有名詞を翻訳する際には各国の言語に修正するように、とのトールキンの意向にそって瀬田貞二の名訳が生まれた。
"Middle-earth"を「中つ国」、“my precious”を「いとしいしと」と言うような訳は、瀬田氏亡き後も受け継がれている。
映画としては1977年に「指輪物語」の前進にあたる「ホビットの冒険」が、後に「風の谷のナウシカ」を制作するスタジオ、トップクラフトによってアニメ化されている。(アメリカからの発注で、アメリカではテレビ映画)
さらに1979年に同じくアメリカからの発注で「フロド FRODO,THE HOBBIT II」が、これは『王の帰還』を大胆に構成し直して「ホビット」のパート2的に作られた。(間に「旅の仲間」「二つの塔」をアニメ化したものがあるらしいが未確認)
さらに1978年ラルフ・バクシの手による『指輪物語』も公開されている。これは俳優を撮影して、その上から作画するロトスコープアニメーションと言う手法で製作されたが、非常に手間がかかり映画としても中途半端に終わってしまった。

ロード・オブ・ザ・リング 指輪物語 [DVD]

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一般的に知られる映画作品は2001年から公開された「ロード・オブ・ザ・リング」三部作だが、有名すぎて語る事もない。また今回のゲームは原作版がモチーフであり映画とは若干異なっているらしい。

MMORPGとして生まれ変わったLotRだが、巷に溢れるMMOとは一線を画す穏やかな世界。現在実装されている世界がエリアドール限定なので、本来戦争に満ちている中つ国の暗い部分はちょっと余所の世界の雰囲気。大局の流れはともかくとして、中つ国に生まれたプレイヤーはむしろわりと日常の小間使いに駆り出される事となる。まあLV10を越えるとモンスタープレイも出来て、PvPみたいな事も出来るのかもしれないが。そういう意味では、余所のMMOのバリバリ戦闘してグリグリ強くなってガンガン突き進むタイプのプレイヤーには向かないかも知れない。
だがむしろ私みたいに、だらだら鉱山掘ってちまちま銅のインゴット作って、時々空を見上げたりするプレイヤーには至福のゲームのようだ。システムとしてはこなれていない部分も多々あるが、何よりホビット庄をだらだら散策するだけでも気持ちいい。そしてホビット特有の暢気で陽気なBGMがまた平和な気持ちにしてくれる。

何より、戦闘で得る経験値よりも、お使いクエストで得られる経験値の方が効率が良い。隣町まで出かけていって、ちょいと頼まれごとをするだけで経験値がぐいぐいもらえちゃう。だらだらのんびり派の私にはこれ以上無いシステムだ。全体の雰囲気だけで言うとSF色を抜いてシステムが小さくなった「スターウォーズギャラクシーズ」の様で、ちょいと小躍りしたくなる出来なのだった。

だがしかし
膨大なテキストを処理しなければならない苦労は痛いほどわかるが、翻訳の些細なミスが多すぎて多すぎてゲームとしていかがな物かと苦言も呈したくなる。
ここを読むと、どうやら日本語ローカライズに当たっているのはゲームとは余り関係のない布陣に見えるのだが。大丈夫なのだろうか? さくらインターネットの社長がコアゲーマーで社長自ら英語の翻訳をしていると言うのは美談でも何でもないだろう。むしろ社長が手を入れてこの程度じゃあ、その下の人間も真面目に働けないし、間違いを示唆する事も出来ない。本来あるべきチェック機能は皆無に等しい。
例えば


・クエストログと実装されている地名との不一致
エストログでは「冬高地」
実装されている地名は「ウィンターハイト」
・クエストログの中で嘘をつく
エスト「水が漏れ出した」の中で必要とされるアイテムの場所が、違う場所二カ所が示されている。
・クエストログの中に記される名前の不一致
エスト「エルフの石」等で現れるグラミールとグラミア。同じ人物を指すが翻訳の不一致。
・地名の不一致
ホビット村にある「緑竜館」なのか「緑龍館」なのか

等々数え始めれば枚挙に暇がない。
ゲーム会社なら本来あるべきチェック体勢が、βと言う名のバグチェックに転嫁されてるとすれば由々しき問題。本来ならば、最低限のチェックは終わった状態でオープンβだと思うが。しかもこれ、既にパッケージで売られている物がこれなんだよねえ。それに考えればわかるけど、さくらインターネットって別にゲームの会社でも無いし翻訳の会社でもないんだよね。


日本のオンラインゲームの活性化をめざす
元々の考え方はデータセンターの立場でオンラインゲームとコミットしていくと言う、ビジネスとして健全だったと思うのだが、あくまでもネット事業主であってゲームクリエイターでは無いわけだ。例えば、映画館の劇場支配人が大の映画ファンだからと言って映画監督をしたりはしない。それは別の仕事だからだ。映画を撮る事で支配人は満足出来るかもしれないが、映画を見た人間が満足できるとは限らない。少なくとも送り手は客の事を考えて創作活動をするべきだと思う。
やっただけで満足できるなら誰だってできるよなあ、と切実に思ったのは、日本語の音声だ。ローカライズされるにあたってNPCに日本語音声が付いたのだが、これが全体を台無しにしているのはプレイヤー誰もが思う事だろう。せいぜい男女二人くらいが声色代えて演じているのだが、演技がなってない、場面に対応する日本語になっていない、下手すると性別まで間違ってるんじゃないの?と思う時も。この辺はもう翻訳とかそういうレベルでは無く演出の領域だ。日本語書ける人間が全て小説家になれる訳ではないように、英語がわかるからと言って演出はできないのだ。

コンシューマ市場参入に向けての抱負、「DDO」、「LOTRO」の今後の展開を聞く
思い返せばこのDDOから、翻訳に関する違和感は続いているわけで、別のインタビューではトールキンのせいになってるが、そんな単純な事ではないよなあ。

元々が言語学者で、翻訳に各国の言語に対応するようにとトールキンの意向ではあったと思うが、その一番の部分でこんな事になるなんてなあ。
ちなみに、映画「ロード・オブ・ザ・リング」三部作では戸田奈津子の翻訳字幕があまりに酷かった為に、指輪ファンから猛烈なボイコット運動まで起こったのである。

ロード・オブ・ザ・リング 字幕問題について
映画「the Lord of the Rings」脳内字幕構想の拠点
憤慨字幕一覧表
「戸田奈津子の字幕はダメダメ」