トリミング問題


2010年10月26日午前1時20分は映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』にて、アインシュタイン(犬)を乗せてタイムマシン実験をした日から25周年であり、それに合わせてバック・トゥ・ザ・フューチャー 25thアニバーサリー BOXが発売される。実験を成功させたドクは、25年後の世界に飛んでBlu-rayの発売を確認しようとしたが、テロリストに阻まれてかなわなかった。誤解されている人も多いかと思うが、パート2に出てくる世界はさらにその五年後で、残念ながら我々が車で空を飛ぶのはあともう少し待たなければならない。


さて、そんな事は割とどうでも良くて、このバック・トゥ・ザ・フューチャーはソフト化の際に回収問題を起こして話題になった作品である。今回はここがキモ。

2002年9月27日に発売されたこのDVD。バック・トゥ・ザ・フューチャーとしては初DVDでありLDから約10年の歳月を経て期待された物だけだけに、ファンの不満は高まった。結果、発売から8ヶ月も経って回収交換と言う顛末。


確かに当時の発売元ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンの対応は褒められた物では無かったが、おそらくアメリカと日本のソフトに対するメンタリティの違いが、この対応を更に遅らせたと思われる。例えて言うなら、XBOXのディスク傷問題で”傷くらいついて当然”と考えるアメリカ側と”綺麗な物で無いと許せない”日本顧客の違いと言うか。


そもそも、このトリミング問題。映画制作当時の視聴環境までさかのぼらなければ理解はしがたいのであるが、80年代初頭から家庭用ビデオが本格的に普及し始め、映画公開からビデオパッケージまでを配給側は考えるようになった。日本ではスクリーンに映った画郭そのままのビデオパッケージを望む顧客が多いが、アメリカでは4:3のTVサイズ一杯に映る方を好んでいた。むしろ”なんで上下に黒い物が映るんだ”と怒るくらい(想像)。なのでそれまでシネマスコープサイズなどで撮影していた映画を、スーパー35と言う、TVサイズに近いサイズで撮影し、スクリーンで上映する時は上下をカットし、ビデオパッケージの際には左右をカットして、と言う風に使い分けていた。当該作品のバック・トゥ・ザ・フューチャートリロジー・ボックス・セットも、海外ではテレビ画面に全部収まる”フルスクリーン”バージョンが発売されており、その嗜好の違いは意外と根深い物がある。


本来ビデオパッケージとして使われるはずのプリントが、上映に使われるパターンもあったらしく、記憶ではキネマ旬報にコラムとしてその事が書かれていた。また、「グレムリン2」だったかな? 映画と、ビデオ版ではギャグのバージョンが違う物が収録されていたりした。


スーパー35による画郭の違いは記憶だけで書くと「タイタニック」あたりまで続き、これも上下カット版と左右カット版では見える範囲が違うのであった。21世紀になって治まったかと思われた画郭問題はアイマックスによって再燃し、ダークナイトではBlu-ray版とDVD版でトリミングのバージョンが違ったり、そもそもBlu-ray版ですら撮影面全部を映していない。


IMAXの画郭比率は1:1.44で、むしろ4:3の昔のTV比率に近く、フルで見せようとするとまたトリミング問題を起こしてしまうだろう。だいたいIMAXで制作する事自体が、映画館へ客を呼び戻そうと言う流れなので、IMAXIMAX。ソフトはソフトと言う住み分けなのだろう。


ちなみに、日本でも80年代のアニメに関して言うと、アメリカほど極端では無いが、スタンダードサイズの35mmで撮影して、プリントを焼く時にビスタマスクをかけて上映していた。ソフト化の際にはそのマスクを外して4:3の比率で商品化すると言うパターン。それで失敗するのが本来マスクで隠れるはずの部分に映ってはいけないものが映ってしまうパターン。実は実写映画でもマイクが映っていたりすることはあったのだが、アニメの場合、セル画を固定するタップ(固定器具)が映ってしまうのだった。これで商品化されたのが「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」。LD版まではそれが確認出来るが、国内DVD発売時にビスタサイズ収録になりこれが消されてしまった。海外版は4:3で発売されていたのでこれは貴重。更にBlu-rayも一端アナウンスされたものの結果中止になってしまった。残念無念。